床屋さん

ベトナムにいると、意外と不便なのが散髪である。街中いたるところに床屋が点在しているにもかかわらず、ついつい後回しになってしまう。ローカルのお店で切るのは安いが、意思を伝えるのがなかなか難しく、切られている間も不安で気が気じゃないのだ。数年前、ベトナムで髪を切ってに日本へ戻ったら友達に笑われたという苦い記憶がある。その後で行った日本の床屋では、どう切るかを聞かれる前に前回何処で切ったのかを聞かれた程だった。

 しかしながら、記憶というものは恐ろしい。あの時の恥ずかしさはどこへ?最近私は毎月必ずローカルのお店で散髪をしている。というのも、苦い記憶に打ち勝つものを発見したからである。ご存知の方も多いとは思うが、ベトナムの床屋では散髪以外のサービスとして、耳掻きや爪切りを施してくれる。その中でも、特筆すべきは耳掻き!まさに耳からうろこが落ちるような経験だった。

床屋での流れは散髪、洗髪、耳掻き、爪切りと続いていくのだが、その中でも一番時間をかけるのが耳掻き。明るい電球を耳元で煌々と点け、細長いヤスリまで使って奥の奥までほじくり出す。その間およそ40分。耳とはこんなに深いものだったのかと26年付き合ってきた身体でありながら初めて知った気がした。店から一歩外に出ると、まるでもう一つのベトナムに足を踏み入れたような気分であったのである。一年分の耳カスを掻き出した気分でベトナムのすばらしさをもう一度かみ締めることが出来る。

これぞ一石二鳥、これぞリフレッシュ。ベトナムにいらした際には是非床屋にお立ち寄りを!

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